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出塁したらすかさずセカンドを狙え 〔前編〕

【サイオスグループ役員インタビュー】Glabio, Inc. は新しい技術とビジネスを追求するサイオスの子会社として2013年に米国で設立されました。そのPresident & CEOを務める栗原傑享にサイオスグループでの挑戦、自らの将来像、それらの背景にある思いを尋ねました。

ピープル2016年3月24日

BayPOSでの挑戦

2013年11月に米国法人として設立したGlabio, Inc.(以下、Glabio)の所在地は、すでにグループの拠点があったカリフォルニア州のサンマテオ。IT企業が集積するシリコンバレー地域の中央地点に位置する、のどかな住宅街です。私は、就労ビザが下りるのを待って会社設立後すぐの2014年、こちらに移住しました。私が渡米した理由は、サイオスグループの一員として、新たな事業創造を任されたためです。昨今の早い市場変化の中でこれまで取り組んでこなかった技術とビジネスそれぞれの領域を模索し、新しい人材を引き入れ、その結果として持続可能な新しい収益を実現することが求められています。また、サイオスが国際戦略の一環として国内外で展開する、各事業間のシナジーを探るタイミングとも合致しました。こうした戦略の先鋒として設立されたのが、Glabioです。

あくまで戦略的な目的意識からの設立であり、明確なビジネスアイディアを持っての設立ではなかったため、まずは現地で黙々と調査研究を続けました。設立してからしばらくは目に見える成果が出せず、悶々とする日々が続きました。企画と試作を繰り返したりサイオスグループ国内外の製品開発に一歩外の立場から関わったりしても、なかなか独自の形が見えてこなかったのですが、渡米より半年後に思いも寄らない方向からチャンスが巡ってきました。かねてからサイオス既存事業における顧客であり、日本国内および海外でお持ち帰り弁当「Hotto Motto」(ほっともっと)、定食レストラン「やよい軒」「YAYOI」などを展開するプレナスが、米国への出店を検討していたのです。そして新市場を攻略するためのシステムが必要と考えられていました。同社の第一進出先がシリコンバレー地域だったので、唯一そこに駐在していた私がシステム検討でのコンサルテーションを自ずと提供することとなりました。

レストランシステムというのは新旧色々あるのですが、調べてみると1~2店の小規模な家族経営レストランを想定したものが多く、新店舗を毎月のように開店させ、エリアマネージャーと店舗との情報連携または人材・在庫管理を見据えた100~1,000店規模のレストランチェーンを対象とする適切な店舗運営システムというのはなかなか見当たりませんでした。検討を重ねた末、目的にかなう店舗内システムを思い切って新規開発するとの結論に至りました。


顧客を起点とする飲食店舗向けITシステム

新システムの狙いは、来店する顧客の嗜好や店舗で勤務する従業員の気質を把握し、それに基づいて店舗営業戦術を速やかに見直していけるようにすること、そのために店舗で集められる顧客および従業員に関するあらゆるデータの取得と分析を行うことです。この狙いは顧客嗜好と従業員気質が的確に理解できれば未知の進出先地域においてもレストランビジネスで大きく失敗することなく、高速にチェーン展開できるのではないかという仮説に基づいています。基盤として店舗運営に必要なPOSなどの仕組みを提供するほか、マーケティングから来店時の顧客体験〜退店後のフォローアップに至るきめ細かな顧客管理といったことを、 クラウドとモバイルを組み合わせて実現します。コアとなるPOSシステムはほぼ形になってきました。去る2016年3月3日のYAYOI米国1号となる Palo Alto店のオープンに合わせて製品リリースと即時本番投入を行いました。


上から米国カリフォルニア州パロ・アルトにオープンしたプレナスの米国子会社が運営する「やよい軒」1号店の「YAYOI Palo Alto店」外観および、店舗内の様子、テーブルに設置されたタッチパネル(⇒関連記事「サイオスとプレナスとの米国合弁会社 BayPOSのシステムが稼働開始」はこちら

このシステム開発のため、サイオスとプレナスで共同出資の合弁会社「BayPOS, Inc.」を米国に設立し、GlabioはこのBayPOSに包括されるように位置付け、開発プロジェクトとサービスビジネスの全てを担うようにピボットさせました。システムは海外での出店を拡大する「YAYOI」ブランドのレストランチェーン店舗に特化してゼロからの立ち上げですが、Glabioでは受託開発を専業にするわけではありません。

しばらく先にはこのITシステムを「YAYOI」の店舗運営だけでなく、その過程で得られる新たなノウハウを融合した、汎用的なBrick & Mortar事業者向けのシステムとして一般化し、外部に拡販する計画をBayPOSおよびGlabioでは設立当初より描いていくことでそもそもの狙いである事業創造ミッションとの整合を図ろうと取り組んでいます。

ところでこのシステム開発プロジェクトがいよいよ本格的に活動開始するにあたって、まず行ったことはマネジメントチームの構築でした。シリコンバレーのエンバカデロ社(旧社名はボーランド)でDelphiや C++Builder等のコンパイラ製品開発のリーダーとなっていた新井正広は、お互いまだ学生だった20年前、パソコン通信のNifty Serveで一緒にDelphiコミュニティを立ち上げて以来の友人でした。そのことを奇貨に、「また一緒に立ち上げよう!」と無理やりに引っ張りこんでGlabioのCOOとなってもらいました。次に、彼と私とがこれまで過去に数々のプロジェクトで組んできたメンバーをかき集めてプロジェクト体制を整えました。現在の開発体制は、新井の下、日本、米国、台湾の三極で構成されています。「働き場所」だけでなく「働く国」にもこだわらない真に国際的な組織となっています。


Glabio, Inc.でCOOを務める新井正広



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