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アニメとUnixコマンドとの出会いが転機に

【OSSのプロフェッショナルたち #4】サイオス「OSSよろず相談室」のテクニカルサポートエンジニアとして、お客様からの問い合わせへの的確な回答やお困りごとを解決するのが仕事という何敏欽(か びんきん)。日本に来たきっかけ、サポートチームの雰囲気、これからの目標などを尋ねました。

ピープル2017年7月11日

OSSに関わるエンジニアとの交流で得られる知見

― OSSよろず相談室で敏欽(びんきん)さんは、どのようなOSSに関する問い合わせを受けているのでしょうか?

:Linuxディストリビューションに同梱されている各種OSSや、そのコミュニティ版OSSに関する問い合わせに対応しています。最近では主にLinuxのカーネルの仕様や、WebサーバーのApache、DNSサーバーのBIND、時刻データの同期管理をおこなうntpdなどの脆弱性に関する問い合わせについて対応しました。

Red Hat Enterprise Linux(RHEL)がバージョン6から7にバージョンアップした際はコマンドの仕様も大きく変わり、例えば、serviceコマンドがsystemctlコマンドに変更され、利用するサービスのカスタマイズが柔軟にできるようになりました。それに関して「こういうサービスには使えますか?」といった、カスタマイズに関わるような内容の質問もいただきました。

初めて聞くOSSに関する問い合わせも、しばしば入ってきます。仕事を通じて開発コミュニティやプロジェクトの幅広さ、活発さをリアルに感じますね。私が持ち合わせている知見で対応できない場合は、上級エンジニアやその領域に詳しい仲間のエンジニアと協力して対応します。


「新しいOSSが次々と登場して覚えることがたくさんあります」とOSSよろず相談室 テクニカルサポートチームの何敏欽

― お客様への回答にはチームで対応することが多いそうですが、チーム内のコミュニケーションはどのような方法でやっているのですか?

:サポートチーム内のコミュニケーションは主にSlackを活用しています。サポート業務は調べ物が多いので普段からみんな黙々と静かに作業をしていて、回答期限前はさまざまな作業が集中するのでオフィス内では会話はほとんど聞こえてこないですね。部外者に「サポートチームは静かですね」と思われがちですが、実際はSlackで会話が盛り上がっていることも多いです。時々Slackで絵文字を送ったり、面白かったことなど書いたりして煮詰まらないように適度な息抜きはしています。このためにもSlackは不可欠です。Slackは本当に便利なので、皆さんもぜひ使ってみてください(笑)

― 敏欽(びんきん)さんは、お客様に対応する業務のほかに、オープンソースカンファレンス(OSC)OSS推進フォーラムといったイベントなどで社外の方とコミュニケーションを図る取り組みにも参加されていますよね。参加してみてどうでしたか?

:日頃は主に社内で仕事をしているので、率直にさまざまなバックグラウンドを持つ社外の方と交流できたことはとても楽しかったです。OSCの会場では、ブースでお会いしたお客様の中に偶然、過去にOSSよろず相談室のサポート業務で対応させていただいた方がいらっしゃって、びっくりしました。私たちはお客様専用ポータルを介してテキストベースのやりとりのみで顔を直接合わせたことはなかったのですが、名刺交換をしてお互いに「あの時、お世話になった方ですね!」と気がつきました。その方も企業のIT部門でサポート業務をされているという仕事の共通点もあってすぐに打ち解けて嬉しかったです。

また、日中韓の3カ国が東京で集まった2015年のOSS推進フォーラムでは、基本的には一般参加者としてイベントに参加していましたが、中国からのゲストへのケア、コミュニケーション支援(通訳)を適宜おこなっていました。会場ではいろんな国々のIT分野における世界トップクラスの技術者を身近に感じることができました。また、各国におけるOSSコミュニティへの参加者も大きく伸びており、これからさらにOSSはすごい発展をするだろうという熱気を感じました。エンジニア同士は国境を越えたボーダレスな交流が盛んです。私も通訳をしながらそうした関係者の架け橋になれたのがよかったです。

Unixコマンドに衝撃を覚える

― ところで敏欽さんは、日本に来られてどれくらいになるのですか?

:8年ほどになります。中国の高校を卒業した後、日本語を学ぶために来日しました。

日本に興味をもったきっかけはアニメです。中国でテレビ放送されていた日本のアニメ番組が大好きでよく見ていました。お気に入りは「スラムダンク」、それから「カードキャプターさくら」の主人公、木之本桜です。

実は小学生の頃、そういう日本で放映されているアニメの絵を描いて日本で開催されていたある絵画コンテストにこっそり応募したことがありました。絵を描くのはもともと好きだったのですが、その応募作品でまさかの銀賞をもらったんです(笑)。「いつか日本に行きたい」と思うようになったのはその頃からですね。親もそんな私の夢を応援してくれました。

― IT関連の企業で仕事をしようと思ったきっかけは?

:中学生の時にテレビで IT 技術者が速いスピードでコマンド入力している姿を見て、いつか自分もパソコンを自在に操るエンジニアになりたいと考えるようになりました。来日して語学学校で日本語を学び、そのまま日本でIT企業への就職に備えてITが勉強できる専門学校に入りました。そこでWebプログラミングを初歩から勉強したのですが、そのときに触れたUnixコマンドに衝撃を受けました。短いコマンドを入力するだけで、いろいろな操作ができることが新鮮でした。最初はechoやcatといった簡単なコマンドからでしたが、徐々にいろいろなコマンドやオプションを自分で調べて試すようになりました。

それまでパソコンの操作といえば、Windowsを使い、マウスで画面のポインターを動かしてクリックするだけでしたが、コマンドはマウス操作ではできないような高度な操作もできますし、工夫すれば複雑なファイル操作や文字列処理することができ、仕事がはかどります。

育児と仕事の両立に理解がある先輩

― サイオスに入社しようと思ったのはどんな理由ですか?

:大きく2つの理由があります。一つめの理由は、それまで学んだITの知識を役立てたいと思ったことです。

もう一つは、産休・育休の制度がきちんと用意されているなど福利厚生が充実していたことです。

実際、サポートチームの職場では在宅勤務やフレックスタイム制度の利用が整備されていて、職場の先輩や上司も子育て中の方がおり、子供が熱を出したりすると「帰っていいよ。あとはこっちでフォローするから」といった形でお互いにカバーしあっています。また、そのためにも特定の人にしかできない業務をなるべくなくすようにし、作業マニュアルを整備するなどチーム全体で情報を共有しています。

最近、ちょうど産休から職場復帰した女性の先輩がいて仕事と育児を両立されている姿を見ていますが、安心してキャリアも積んでいけるのはいいですね。世の中では働き方改革が注目されていますが、私も将来は先輩方のように上手にバランスをとって仕事と生活を充実させていきたいなと考えています。

― なるほど。では最後にエンジニアとして今後の目標を教えてください。

:OSSは、新しい技術の登場とともにソフトウェアもどんどん出てくるので、勉強が不可欠です。最近では世の中のニーズもあり、コンテナ型仮想化技術のDocker、NoSQLデータベースの一つであるRedis、2017年5月からサイオスがサポートを提供しているIT自動化フレームワークのAnsibleに関する知識が特に要求されています。ただ、新しい情報がどんどん出てくるので、ちょっと待って!と思わず言いたくなる時もあります(笑)。でも、いずれこれは誰にも負けないくらい知識があるというOSSをいくつか持ちたいですね。 頑張ります!

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