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日本OSS推進フォーラムとIPAが「OSS利活用事例セミナー」を共同開催【後編】

2024年5月27日、日本OSS推進フォーラムは、情報処理推進機構(IPA)と共催でセミナーを開催しました。テーマは、ビジネスをソフトウェアの力でどう変革するか。価値の創造や事業の変革に取り組む企業の事例を通じて、イノベーションの具体的なヒントを探りました。こちらのレポートの後編です。

テクノロジー2024年6月25日

新たなエンタメ体験を創出するweb3の可能性

スカパーJSATは、1985年の通信の自由化後、日本初の民間通信衛星事業者として立ち上がり、1996年には、衛星放送サービスを開始するなど創業以来、新たな事業領域を開拓してきました。現在はアジア最多の保有衛星を基盤に宇宙事業とメディア事業を展開しています。近年、海外の動画配信サービスの台頭もあり、国内の放送・メディア事業は厳しい競争環境に置かれています。
そうした中、同社はブロックチェーンなどのオープン志向の技術に支えられたweb3(ウェブスリー)を活用する、新しいエンターテインメント体験の創出に挑んでいます。新規事業の開発を含め多数の事業変革を推進してきた、M&A・事業開発担当ディレクターの上垣健吾氏は同社の取り組みを紹介しました。

そのひとつに、スカパー独自のweb3サービスである「スカパー!投票」があります。初回の投票イベントでは、アイドルのイベントでファンが曲のセットリストや髪型を投票で決めるという新しいエンタメ体験を提供しました。ファンは投票を通じて獲得した「熱量証明書」というNFT(非代替性トークン)に応じて、最前列でイベントを観覧できる特典がもらえるなど、リアルとデジタルを融合した体験を楽しみました。

「ブロックチェーン技術を活用しながら、クリエイターであるアイドルと一緒にファンがコンテンツを創り上げるという新たな価値創造には手応えがあり、web3の可能性を感じています」(上垣氏)

今後はさらにファンデータの分析や分散型ID(DID)などを組み合わせた、よりパーソナライズされたサービスの提供のほか、クリエイターの利益や知財の保護強化などを検討しています。

「web3はコミュニティ、カルチャー、産業そして、社会を変革する可能性を秘めています。しかし私たち一社だけで変えられません。皆さんとの本日のような交流や連携を通じて、ハピネスを最大化するエンターテインメントの未来をともに創出したいと考えています」と述べました。

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左:スカパーJSAT株式会社 上垣健吾氏、右:合同会社SEEKER 代表 佐々木豊氏

生成AIがビジネスや社会にもたらすインパクト

合同会社SEEKER 代表の佐々木豊氏は、生成AIとセキュリティに関する知見を生かし、企業のビジネス変革や価値創出を支援しています。講演では、生成AIの市場動向、日本での先進的な活用事例、今後の展望などを述べました。

「生成AIは、これまで複雑で高度なスキルセットが要求されたデータ処理を、簡単にしてしまう技術です。コーディングの効率化、ソフトウェアの開発生産性やコールセンターの対応品質の向上といったメリットを得る日本企業が増えています。オープンソースの生成AIモデルを利用することで、カスタマイズ性が高まるだけでなく、コミュニティのサポートを通じた課題や疑問の解決が期待されます」(佐々木氏)

生成AIの品質を高める学習に必要なコンテンツを、日本が豊富に有していることはビジネス上の好機である一方で、生成されるコンテンツの品質保証やセキュリティ、知財の保護・活用、倫理的な問題、技術を活用できる人材の育成など解決すべき課題は少なくありません。

乗り越えるべき壁は多々ありますが、生成AIを人間の創造性を高める手段として活用し、アイディアの創造や好奇心に基づく知的な探求に注力する時代にシフトしつつあることが佐々木氏の講演から伝わってきました。



講演後の質疑応答では3名の講演についてさまざまな質問が寄せられました。また、閉会後には参加者同士の交流が盛んに行われ、有意義な場となりました。

*本記事の内容は2024年5月時点の内容に基づきます。


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