パネルディスカッション・レポート 【オンライン就活を語る!】学生の就活現状・課題、学校・先生の支援について
2021年12月3日、大学と高等専門学校の先生3名をお招きし、パネルディスカッションを開催。オンラインでの授業や就活の現状、学ぶ側・教える側の悩みや課題解決に向けた取り組み等が話題に上りました。実りある学生生活や就職活動、大学運営における課題解決のヒントになれば幸いです。
ピープル2022年1月21日
オンラインでの授業や面接に感じる寂しさと心のケア
サイオステクノロジーでは、就職活動中の学生を主な対象にしたアンケート調査を実施しました。その結果からは学生たちがさまざまな悩みや不安を抱えていることが浮かび上がりました。アンケート調査結果はこちらからダウンロード可能です。
長引くコロナ禍でZoomなどのビデオコミュニケーションツールを用いた授業や就活に慣れてきた学生がいる一方、利用するネット接続環境のばらつきや不慣れなパソコン操作への戸惑い、対面の機会が減り相談できる相手が乏しく孤独感を覚える学生も少なくありません。
中央大学で心理学を教える富田拓郎先生は次のように話します。
「Zoomを用いた授業が終わって一斉に退室ボタンを押してしまうとバタバタっと画面から参加者が消え、取り残される寂しさや突然放り出される不安を感じている学生もいます。画面上で独りぼっちにならないように最後の一人が退室するまで待つように気をつけています。またオンラインでは、学ぶ方も教える方も同じ空間にいて同じ時間を過ごしているという感覚がリアルにありません。心理学では身体性が心に与える影響やケアに関する授業、ワークショップ運営のあり方を模索しています」(富田先生)
津山高専出身で大学卒業後、自動車メーカーでの勤務経験を持ち、呉高専で自動車の空力騒音や流体力学について教える尾川茂先生は、現在40名ほどのクラスを担当しています。常に目配りし、出席日数が不足しがちな学生には早めに話しかけ、何気ない会話を通じて悩み事の相談に乗るよう心がけています。
一方、大規模な高等教育機関では個々の先生の努力だけでは一人ひとりの学生に目が届きにくい限界もあります。
文系学部から理系大学院に進学し、卒業した後にIT企業での勤務経験を経て北九州市立大学で教える古川洋章先生は気づきを得るために、LMS(学習支援システム)で提供するオンライン授業のログイン時間にも注意しているといいます。
「普段はLMSに日中にログインしていた学生が深夜にログインすることが多くなったり週末にまとめてオンデマンドの授業動画を閲覧したりしていると、生活サイクルの乱れかなと心配になります。気になる学生がいれば、学生のケアを専門にする担当の先生に早めにアラートとして伝えて対応をお願いするよう心がけています」(古川先生)
学んできたことや志望のイメージを絵に描こう
就活がうまくいく学生とそうでない学生の間にはどのような違いあるのでしょうか?またどのようにすれば就活がうまくいくのでしょうか。
尾川先生は「就活がうまくいく学生は志望動機が明確です。たとえば、なぜ数ある自動車会社の中でこの自動車会社に応募したのか。自分の強みはなにか。自分なりの言葉で表現することができます」と言います。
逆に、なかなか採用が決まらない学生は自分が学んできたこと、仕事を通じてやりたいこと、なりたい自分がなかなかうまくイメージできないことが多いようです。そんな学生に尾川先生がすすめているのは、自分が学生時代に取り組んだことや、将来就く職場でのシーンを想像しながら絵に描いてみることです。
「どんな絵でも構いません。文字の丸暗記だと面接で頭が真っ白になることがありますが、絵の記憶があると思い出しやすくなります。たとえば、3年次に取り組む1年間の総合実習で10人の仲間とともに、企画・設計、旋盤やボール盤を用いた加工、組立などを分担して作品を完成させた学生には、その実習で自分は何を担当し、どこに苦労や達成感を感じたか。なぜそう思ったのか考えさせながら描いてもらいます。描きながら深めた考えを面接官に話せば、相手にもその人の強みや個性がより明確に伝わります。想定した質問と異なる面接官の問いかけにも応じやすくなるでしょう」(尾川先生)
実は、尾川先生も自ら高専卒業後の大学受験で不合格だった経験から「覚えるのではなく自ら考える」という勉強の仕方の重要性に気づいたといいます。
「『すべての夢は必ず実現できる』とウォルト・ディズニーは言ったそうです。私もそう思います。失敗しても諦めなければ必ず夢は叶います」と、尾川先生はパネルディスカッションを視聴する学生に応援メッセージを送りました。
「自分には向いていない」と思っていた業界が合う場合も
富田先生は「就活がうまくいく学生は総じて準備に取りかかるのが早いと思います」と指摘します。
「他方でなかなか受かりにくい学生もいます。そうした学生の中には何かこだわりを持っているように見える人もいます。ならばそれを生かせばいい。自分の個性や自分らしさとは何か。どんなことが向いているか。就活中にじっくり考え、戦略を立てて臨むことが大事です。自分をよく知るには時間がかかりますから、その準備を含めて早めに取りかかりましょう。また、身の回りに信頼できる大人を3人くらい学生時代に見つけておくとよいでしょう。大学の就職課やキャリアセンターでのアドバイスに加えて、そうした大人にも相談してみてください。自分自身では気づきにくいことなど、異なる角度からもらえるアドバイスが案外役立つかもしれません」(富田先生)
そして、古川先生は就活でうまくいく学生は「明るさがあり自分を認めてあげている」という共通項を挙げます。
「まずは自分を好きになることです。自分のことが好きでなければ相手にもよさを伝えられませんよね。それでも精一杯やって就活に落ちてしまったならば、コロナ禍のせいにしてみましょう。私が大学院在学中に就活していた頃は、ちょうど2008年以降のリーマン・ショックの真っ只中でした。企業の募集枠が3分の1くらいに減らされて愕然としました。でも『受からなくてもリーマン・ショックのせいだ』と考えることにし、採用されてなくても『次の会社だ』と気持ちをすぐ切り替えました。おかげであまり落ち込まずに済みました。皆さんも、『この際だから』とあえて知らない業種業界の企業にも応募してみましょう。『自分には向いていないな』と思っていた業種に案外合っていると気づかされることもあるかもしれません。コロナ禍のオンライン就活では移動時間や交通費がかからない分、たくさんの方との出会いが可能です。前向きな気持ちで就活を楽しんでください」(古川先生)
モデレーターを務めた黒坂は「サイオステクノロジーにもさまざまな方から応募をいただきますが、もしIT業界で働きたいのであれば『自分がどうなりたいか』ということをしっかり伝えてみてください。コミュニケーションが得意であることに越したことはないですが、もし話すのが苦手でも『こんなプログラムを作りました』と動くコードを見せてくれると、よいアピールになるはずです」と話しました。
今回、チャットを通じて視聴していた学生の方々からも質問をいただき、ありがとうございました。サイオステクノロジーでは、今後も有意義な学生生活や学校運営の課題解決に役立つイベントを企画してまいります。どうぞご期待ください。
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